あらすじ
魏若来は“虎穴”で沈図南と再会する。偽札製造工場の場所を割り出していた魏若来は軍も派遣していたが、広東軍に見捨てられた沈図南は共産党の捕虜となり、死刑が確定する。共産党エリアの庶民の生活を目の当たりにした沈図南は、彼らを陥れるような自分のやり方に後悔するが、林樵松に救出されて国民党陣営に戻る。
みるアジア

ネタバレ感想
人が変わったみたいに、近真を無礼だぞと罵る図南。
この人も普通に、弱い人間だったんだなーって話ではあるものの、ねえ。
驚いたように悲しそうに、あなたにつくづく感心するわ、涂(トゥー)特派員、と近真は言いました。
若来を党国の大黒柱に育てたかったんだと言う図南に、若来は、一度革命根拠地に来てくださいって言うんだけどねえ。貧しくても、庶民は笑顔と希望に溢れていると。まあ、素直に聞く筈はないわな。
図南は立ち上がり、君を殺せないとでも思うかと叫びます。近真、慌てて立ち上がる。
若来は図南を真っ直ぐに見据え、任務中に犠牲になっても心残りはありませんと答えました。
こういう場では、意図があってわざとやっているのでない限り、感情を露わにして激高する人と、どんな脅しにも冷静さを失わず対処する人が並ぶと、分かり易ーい比較にしかならないよね。
上海時代は、腹黒い有象無象に対して、この人は間違いなく後者だったのに。
その時、外で爆発音がしました。
林の中に潜んでいた林樵松は、工場のほうだと気付きます。
銭逢時(チェンフォンシー)に応援を頼むよう言い残し、工場に向かう林樵松。
やっぱり林の中にいたもうひとつの勢力は広東軍だったみたいだけど、銭逢時は、別働総隊からの応援要請の信号弾をあざ笑ってるよ。
いつの間に来てたんだろう。共産党の仲間達が、工場を襲撃していました。
あれほど文彪が、誰もいないと言っていたのに。これは孔令崢たちの特別中隊かな。ゲリラ戦慣れはさすがってとこかしらん。
てか、若来かっ(笑)
若来は事前に、偽札工場に適した環境の条件を考慮して、この場所を特定してた。
山の中の隠れた場所であること。紙幣製造に必要な水源があること。
工場があれば排水が出るので、周辺住民に下痢や痙攣、腎疾患の患者が多い地域を病院で調べた。
工場はその上流だと範囲を絞り込み、車の轍を探し、大鍋を使う工場の煙を見つけた。
だから若来と近真が2人で乗り込んだ時には、既に共産党の工作員達は工場周辺に潜んでいた、と。
素晴らしい。
図南も、さすがだなとしか言いようがない。
でもなぜ自ら危険を冒して来たのかと聞かれた若来は、余計な犠牲者が出るのを防ぐためだと答えます。
山の中では、別働総隊が銃撃戦を繰り広げてたんだけど、ふと文彪が気付きます。この周辺は銭逢時の持ち場だと。
銃撃をやめて、名乗り合うそれぞれ。真剣な林樵松に対して広東軍は、そんなの事前に言ってくれよーなんて、せせら笑うような返答。
林樵松が工場が共産党に襲撃されたから応援を頼むと言っても、銭逢時の部下は、我々の任務はここでの待ち伏せ、上の許可がなければ動けないと拒絶。
ふふん、銭逢時を煽りまくったツケだねえ。
若来は図南に、贛州(かんしゅう)の天才策士にも会いたかったんだと言いました。
更に図南を革命根拠地に連れて行き、どうしても実情を見せたかったらしい。根本のところで若来はまだ、図南を諦めてないんだなあ。いい弟子じゃないのよぅ。
そこに、共産党の攻撃を防ぎきれないと、従匀が。
ふむ、盲目的に従う忠誠心を持つこの人と若来との対比も見えるねえ。
共産党の猛攻。春苗もいるよ。
逃げ出した作業員たちも捕まり、工場内に共産党が入り込んで春苗が若来達を探し始めた頃。
部屋では図南と従匀が2人に拳銃を向け、逃げる際の人質にしようとしていました。
従匀が車を用意しに消えたところに、春苗と孔令崢たちが現れ、形勢逆転。
図南ひとりに、いくつもの銃が向けられます。
撃つなと叫ぶ若来。
そっか、このために若来と近真が来たんだ。図南を生かして捕縛するために。
党国に背くくらいなら、今ここで命を絶つと、自分の頭に拳銃を向けた図南に、近真は魚児と義姉さんのことも考えてと言います。
若来も、あなたが我々の経済に打撃を与えたことで、現地の庶民がどうなったか、多くが一家離散に追い込まれそうな状況を、同じ中国人として何とも思わないのか、革命根拠地に来れば、考えが変わるはずだと。

2人の呼びかけに、少々図南の手の力が抜けたのを見た春苗が、すかさず後ろから銃を奪い取ります。
この子ってば、こういう時、本当によく状況を見て動くよなあ。エライエライ。
楊六指(ヤンリウジー)に、国民党の用意した機械を燃やすのは勿体ないと言われ、分解して持ち帰ろうとした孔令崢。でもまだ外には敵がいるから燃やそうと若来に言われ、涙を呑んでオイルを撒きます。
まあね、資材に乏しい共産党では、喉から手が出るほど欲しい最新機材だったのでしょうが。
分解して持ち帰る時間等々の危険と、仲間達の命には代えられないやね。
炎上する工場の火消しに急いでやって来た林樵松たちは、暗闇の中、仕掛けられた罠の爆薬の線に引っかかってしまい、更なる爆発が起きます。
侮っていた若来にしてやられ、広東軍からも裏切られた林樵松は、悔しさでいっぱい。従匀が、先生が連行されたと慌てていても、すぐには返事もできないくらいよ。
一夜明け。
共産党区内に収監されていた図南は、活気のある庶民たちの声を聞きながら、隙間からその光景を見ていました。青鼠色の人民服を着た共産党が、人々と穏やかに交流しているところを。
その表情は、昨夜とは打って変わって穏やか。自分が本当に見たかった庶民の姿だったんでしょ、アレが。
とはいえ、若来が入ってきたら、慌てて座り込んで、不貞腐れた表情を見せるというね。
会いに来ましたと言う若来にも、笑いに来たのか、と。
若来は、自分達の銀行を見せたかったみたい。それでも自分の考えは変わらないと頑なな図南。
頑固だからねえ。今まで自分が信じていたものが、間違えていたなんてのは、プライドの高い人ほど、認められないよね。どう考えても薄々感づいてはいたとしてもさ。
若来は、僕たちがここで頑張る理由を伝えたいと言い、図南を町へと連れ出しました。
若来が歩くと、子供たちが駆け寄り、若来に小さなお菓子をくれます。
お母さんが、お陰で偽札に騙されなくて済んだって言ってる、紅軍は私達を守ってくれる、私も大きくなったら紅軍に入るわ。
私も私も、と口々に言って飛び跳ねる、魚児と変わらないような子供達を見る図南の顔は、どうにもこうにも複雑そうよ。
そんな図南を見て、お考えは分かりますと若来。
三江口が封鎖されても、僕たちにはタングステンがある、輸送ルートは三江口に限らない。
タングステンが資金源なのは既に分かり切ってることだけど、これ、図南が逃げたら、今度は集中的にタングステンやられるよねえ。とはいえ、なんだかんだ若来も、打開策を考え着くだろうけど。
中華ソビエト共和国銀行は、公債を買いに来る人々で溢れていました。
春苗が大声で演説してましたよ。
我々紅軍は、国民党から民衆を守るため、偽札工場を潰して特派員を捕まえました、銀行は今、大変な状況です、みんなで支えましょう。
それに応えて、以前は敵に惑わされて銀行に押し掛けたけど、今度は紅軍を応援するぞ、国民党を倒すぞ、のシュプレヒコール。
苦い顔でそれらを見た図南は、なぜだと言います。貧しいのに、償還も見込めない国債を買うなんて。
若来は答えます。
以前人々は国民党を信じて、建設国債を買った。それは当時の国民党が敬愛されていたから。でも結末は?
共産党なら大丈夫だと言えるのかと聞かれた若来は、まっすぐに図南を見据えて、ええ、と。
金融の基礎は信用だと教わった、我々は信用されている。共産党は数年がかりで地道に庶民の信頼を得た。金銀より重要なのは人の心。金融の真の意義を、僕はこの地で知った。
何も言えない師匠でございますよ。ふっ。
行内に入り、銀行の経緯を説明しようとした若来だけど、図南は以前の若来のレポートを覚えていました。共産党は恐れるに足りずとまとめたことも。
若来は、ある人にそう書くよう頼まれたと白状します。その頃、転向を?と聞かれたけど、否定した若来。でも国民党には失望していましたと答えました。
銀行を見て回った図南は、小粒でも立派な銀行だなと。
まだ草創期で不備も多く、央銀のような風格はないと言う若来に、図南は、銀行にとって大事なのは風格ではなく信用だと言います。
若来は信用はあると。地道に地元の農家の顧客に、農具や種のための支援を行ってきた、包囲討伐がなければ自給自足が実現していた。
去年の秋は、毎日村人から銀行に収穫物が届いて、銀行への感謝を表してくれたことに感動した。頑張った甲斐があった。
行動と結果に自信を持っている若来の毅然とした言葉とその視線を受け、図南は独房で考え込んじゃってました。ま、当然でしょうね。
目の当たりにした、共産党の元での庶民の行動や言葉。ようやくそこに何か感じている自分を、認めるでしょうか。
若来と近真は、雷鳴から、上層部の決定を聞かされていました。
沈図南は、明後日、処刑が決定したと。
涙を浮かべる近真だけど、仕方ないことも分かってるでしょう。若来もしかり。
独房の隙間から外を眺め、涙を浮かべてうっすら笑顔になっていた図南は、若来が来たのに気付き、急いでまた座り込む。
近真と一緒に静かに食事の準備をし、そこに座った若来を見て、最後の食事かと言います。
近真が何か言いかけたのを止めて、図南は、娘と妻は仁愛医院にいる、贛州(かんしゅう)から送り出して欲しいと言いました。妻に伝えてくれ、この償いは、来世で必ず、と。
出国したがっていたから、力を貸してくれと言われ、安心してと答える近真。
図南は若来にも、君が上海で共産党と通じていると疑われた時、私が圧力に負けずに助けたんだぞ、その恩を覚えているのなら、今後近真の世話を頼むぞ、と。
明日は刑場に来るな、遺体も見るな。君が私を思い出す時、頭に浮かぶのは優秀で頼れる師の姿であって欲しい。
すっかり覚悟を決め、央銀にいた頃のような目に戻った図南に、若来は、師であり兄でもありますと答えました。
図南はようやく、後悔していると言いましたよ。
あの時、屈服するべきではなかった。偽造銀貨事件も国債事件も、私が反抗したところで、職務を解かれるくらいだった。キャリアは失うが良心はこれほど痛まなかっただろう。
図南は贛州に来てから不眠になってたらしいよ。だからあんないっちゃった目をしてたんだな。
死んだ阿文や破産して泣き叫ぶ庶民のことを、毎晩考えちゃってたらしいよ。
それを聞いた若来は、良かったと答えました。あなたが変わってしまったのかと思ったと。
若来が羨ましいと言う図南。金融業の者として、私も卵やトウモロコシを貰いたかった、庶民に尊敬され、認められて、信頼される人間になりたかったが、なれなかった。
死を前にして、ようやく言葉にできた本音ね。
立場を選び間違えただけですと言う若来に、君はここで数々のいい仕事をし、庶民のために働いてきた、君を誇りに思うよと図南。
ここで見た光景を、共産党の在り方を、素晴らしい、認めざるを得ないと、涙で全肯定し、自分は国に報いたかったが、もはや手遅れだと図南は言うんだけど。
国民党の腐敗を批判しながらも、それでも三民主義の信奉者だから、沈みゆく船にも乗り続けるって言うんだよ。はー、さいですか。
若来、君は賢くて高い志がある、何があっても初心を忘れるな、私のように勝敗に拘って己の本心を見失うな。

若来と近真を泣かせた、これが最期の言葉かと思いきや。
その晩、火の手が上がります。多分林樵松の仕業でしょ。その間に、図南は逃亡していました。
ふらふらと魚児の病室に行き、辞書と抱き合う図南だけど、執務室に戻ると、誰かの言葉を思い出してます。雷鳴かな。近真や若来がポツポツと伝え続けてきた話を、きっちり整理して突きつけられてたのね。死刑が決定する前に、面談してたんでしょうね。
近真と若来は向かい合って、二度と悪事を働かないで欲しい、ここに来て心を打たれたはずだから、きっと大丈夫なんて図南のことを話しつつ、死刑前に逃げ出せたことに、内心ホッとしてる感じだね。
近真は若来に、自分が作ったタングステン線を見せます。鉱石よりも売り易く品質がいい、工場を建てるには数百人必要だけど、作り方は簡単だし設備も用意できる。
若来もまた、頭の中でサクサク計算した模様。タングステン線で広東軍と交渉ができる、ダメなら輸出すればいいだけ。
若来は資金と人材集め、近真は生産ラインの解決と、分業でまた一歩前へ。
病院では魚児がまた、怖い夢を見たと辞書の胸で泣いていました。
そこに図南が顔を出すと、魚児は途端にまた、怖いよと声を上げて泣き出します。更に図南に向かって、帰ってよ、人殺しでしょ、会いたくないの、と。
もうこれは、どうしようもないわね。子供じゃなくたって、あの衝撃はしばらく忘れられないよ。
病室を出た図南は、一か月で銭逢時を倒すと従匀に告げました。
共産党の財政状況は、相変わらず厳しい模様。
突破口はタングステン。若来は先物取引を提案しました。
貨物引換証を渡して現金を受け取り、共産党が三江口を突破できれば商人は品物を受け取れる。
こちらを信じて先にお金を立て貰うには、条件が2つ。
三江口を突破して輸送ルートを確保。古い鉱山も利用して生産量を増やす。
雷鳴は笑顔で若来に、その案を進めるよう指示しました。
一方、図南は、蒋介石秘書室の明達(ミンダー)に、経済封鎖の効果が間もなく現れると電話してました。
明達は、委員長はタングステンが根源だと言っている、と。
タングステンの国際価格が3割も値上がりしているらしい。でも国民党では供給が追い付かず、取引先の西洋からも突き上げられている模様。
電話を切った図南は、もう一息だと言うんだけど、共産党のタングステン生産を抑え込むために、強力な爆薬を用意したと言う林樵松に驚きます。爆発させたら、庶民も巻き添えだものね。
だけど、今更何を驚いてるんだみたいな顔の林樵松は、最大の鉱山である盤古山採掘場を爆破すれば、数か月は採掘できないと言い、図南も、いい案だ、だとさ。
泥船と分かっていながら、罪のない人々を犠牲にしながら、破滅の道を突き進む男よ。ここら辺はもう意味が分かりませんわ。頭では自分のやっていることは、国のためにならないだろうと重々理解できているのに。もうこの人は国のために動いてるんじゃないよね。国民党という自分の幻想と心中しようとしている。愚かだな。お陰で、助かったかもしれない命が、最終回までにいくつも散っていきます。この人のせいだけじゃないけどさ。
早速、各地の鉱山が被害を受け始めた共産党。タングステン狙いなのは明らか。
若来は雷鳴から護身用の銃を受け取りました。更に孔令崢に警護を強化して貰うらしい。
ますます危険になるということだ。根拠地に魏若来ありってのも、有名になっちゃったかな。

タングステンだけでなく、図南の包囲網は着々と成果を上げ、共産党区内では、塩の不足も深刻な状況に。打開策は広東軍を抱き込むことなんだけど、いまいちアイツ、銭逢時は信用ならない(笑)
ただ、雷鳴は、銭逢時は扱いやすい小心者の守銭奴だと言います。
危険だと言われつつも、若来はまた近真と共に、贛州に行ってみることに。
2人が来たことは、図南にも、即報告されていました。
こちらは銭逢時を潰すことを考えてるからなあ。取り引き前は泳がせて、銭逢時が共産党と通じている証拠を掴めと、図南は林樵松に指示します。
林樵松は、私に一任を?と尋ねました。図南は、近真は妹である前に共産党員だと答えます。
これが怖いんだよねえ。
林樵松は、何の罪もない一般庶民の命も顧みない、残酷な策を使うヤツなんだよなー。
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