あらすじと所感
期待どおり、面白かったのです。
これを見たいがために、今月またちょびっと、プライムビデオのエンタメアジアに入ったのです。
ですが、これ私、各話書けないわー。複雑なんですよ、とっても。
見ていて、え、何、どういうこと?え?ってのが、何度も何度も訪れます。
単純な、敵と味方の潜入間諜物語ではなく、味方だって一枚岩ではない。ま、考えればそれも当たり前ではあるんだけど。むしろ敵方の、曹魏のほうが分かり易く(というか敵方なんで、そこまで突っ込んで描かれてないだけでしょうが)、味方の蜀漢は、政争も介入していてややこしい。
おっさん達、腹黒過ぎるわ!と、シンプルおバカなおばちゃんは思う(笑)
主人公は、蜀漢、司聞曹の密偵で曹魏に潜入しているコードネーム、白帝(バイディ)の陳恭(ちんきょう 字は思之 しし)と、内部に潜む間諜に対処する司聞曹の下位組織、靖安司の副司尉、荀詡(じゅんく 字は孝和 こうわ)の2人。
2人は義兄弟の契りを結んだ仲良しで、陳恭の司聞曹入りも、荀詡の口添えでしたっけ、確か。で、荀詡の従妹、翟悦(てきえつ)は陳恭の妻。
司聞曹というのは、諸葛亮が腹心の楊儀(ようぎ)に作らせた、諜報機関です。
舞台は、魏、呉、蜀の三国時代だけど、三国志と言えば!な有名人達の死後。
魏では、曹操、曹丕と亡くなって、曹叡の時代。
蜀では、劉備が亡くなって、劉禅の時代。
ボンクラぼったんの後見人として、どーんと諸葛亮の存在感が一際光っていて、李厳(りげん)がそれに対抗してぐぬぬっていう状況です。
荀詡の家は(従妹の翟悦の家も)、代々諸葛家の密偵の家系だっていう、生まれながらにして裏表満載の闇の世界に片足突っ込んでるような人。聡明で智謀にも優れているんだけど、性格は真っ直ぐで誠実な頑固さん。だから仕事の腕は見込まれているものの、たかが靖安司の副司尉と、駒扱いにするエライさん達には、時に厄介な相手となります。様々画策しても、内側から食い破られるからね。
ならホントのこと話せよと思うんだけど、一本気な荀詡は素直に思惑に乗りそうにないとか、役職的にちょい下だとか、いろいろあるんでしょうが。毎度、大事なことは何も知らされないまま、頑張る頑張る。って時点でもうなんだかカワイソウな子。
ある人物の台詞に、荀詡はもう誰にとっても必要のない駒だ、みたいなのがあったり、複数サイドから、荀詡は殺せ、消しとけ指示も飛んだりします。
キリッとモードじゃない時の白宇は、不憫な子がかなり似合う俳優さんだよねえ。お上手ということなんですけどね。
夫、陳恭の曹魏潜入後、妻の翟悦も、荀詡の指示で、曹魏に組する五仙道という組織に潜入済。
そして陳恭。
曹魏潜入後、あちらの間軍司という諜報機関の設立者である郭淮(かくわい)の甥、天水郡郡守の郭剛(かくごう)の信頼を得て、順調に天水郡の主簿となっていたんですが。
諸葛亮が進める北伐のために、白帝が送った情報のせいで、蜀漢は街亭の戦いで敗北を喫し、いわゆる「泣いて馬謖(ばりょう)を斬る」事態が起こります。
白帝の情報は誤りだったと、白帝が裏切ったと目されてしまう。
だけどさあ、暗号文は誰にも破れない、情報をすり替えるなんてことは不可能と、偉いさん達は思うわけですが、自分達だって白帝を何年も潜り込ませてるんだから、自分のところにも何年も前から間諜がいたっておかしくはないよね?してやられてたって変じゃないよね?
だけど流れは、白帝の裏切りのせいってことに。
そこで、荀詡に白羽の矢が立ちました。
曹魏の天水に忍び込み、白帝に会って真偽を確かめること、もしもの場合は、始末して来いと。
その覚悟を測るためだったんでしょかね、いきなりの拷問シーンですわよ、荀詡くん。うう。
だけど荀詡は陳恭を信じている訳よ。絶対に裏切っていない、きっと何かがあるはずだと、彼はそれを確かめに行きます。
上司の曹掾(そうえん)馮膺(ふうよう)からの拷問後、毒まで飲まされてね。解決して帰って来ないと、解毒剤貰えないっていう。掟とは言え、気の毒過ぎる。
荀詡の拷問シーンは2回あって、どっちも味方からなんだよ。なんちゅーか、もう…
とは言え馮膺も、義兄弟の荀詡を送ることで、本音は陳恭の命を奪いたくなかったみたいなんだけども。いや、分かりにくいっちゅーの。
ただ荀詡のいない間に、この件の責任を問われて、諸葛亮の腹心、楊儀と馮膺は一旦失脚。
司聞曹は反諸葛亮派の李厳が取り仕切ることになり、馬謖の件で諸葛亮に意見して追放され、丞相諸葛亮を恨んでいる李邈(りばく)が、李厳の腹心、狐忠(こちゅう)から推薦され、馮膺の後釜に座っていました。楊儀⇒馮膺は諸葛亮のために、李厳⇒狐忠⇒李邈は諸葛亮を陥れるために、って人達です、一応。
天水で再会し、やっぱり白帝の送った情報は正しかったこと、司聞曹に潜入している曹魏の密偵、燭龍(しょくりゅう)って存在があることを突き止めた2人。コイツをあぶり出さないことには、陳恭の疑いは晴れません。
そのために、荀詡は白帝を始末してきたテイで蜀漢に戻ります。解毒剤貰ったよ(^m^)
陳恭は、郭剛の命で、自分を疑っている間軍司司馬の糜冲(びちゅう)と共に蜀漢の連弩の技術を盗む青萍計画実行に向かい、途中で糜冲を殺して自分が成りすまし、本物の糜冲を知らない五仙道(青萍計画の拠点)に潜入しました。
ここで死んだのは陳恭だよってね。これで曹魏サイドでも蜀漢サイドでも、陳恭は死んだことに。
丁度、蜀漢からも白帝=陳恭と公にされて、双方から追われる立場になったから、これで白帝を始末しろ問題はひとまずクリア。
この青萍計画ってのも、表向きは蜀漢の優れた武器の技術を奪う計画ってことになってるんだけど、本当は違うんですよ、裏にはもっと大きな郭淮の計画が隠されています。
だけど陳恭さん、やっとの思いで糜冲として五仙道に行ったら、自分の嫁が五仙道の聖女とか呼ばれてて、五仙道の大祭酒、黄預(こうよ)の許嫁になってたっていうね。勿論密偵なんだけど、いや、なぜ聖女?って戸惑いが。いきなり踊るし(笑)五仙道って、道教がベースとなってる組織のようなので、そういう入り込み方が楽だったのかもしれませんが。
あ、そうそう、陳恭が本当に糜冲なのか確かめるために、この五仙道の長老が2人、曹魏の人物に成りすまして陳恭を糾弾しようとするんですが、イマイチやり方が下手で、逆に陳恭にコイツらは本物の曹魏の者達ではないとバレ、おのれ間諜めと、その場で殺されてしまうんですよ。仕掛けた黄預も陳恭の手前、仕方なく味方の長老を殺さざるを得ないんだけどね。
この時、殺された1人が「有翡」の霍連涛(かくれんとう)役の方でした。あのカラクリ人形みたいな動き、顕在(大笑)
だけどそのうち、燭龍からの情報により、翟悦が蜀漢の密偵だったとバレて捕らわれ、助けようとしていた陳恭の目の前で自害…
一見、愛する妻の死によって、ここから陳恭の心に変化が生じ始めてもおかしくはないよね?テイで表向きは進んでいきますが、実はそんな単純なものじゃなかったんですよ。まあ、何年も離れていた妻と触れ合うこともなく目の前で死なれるって、そりゃショックでしょうが、でも言うても間諜夫婦、ある程度覚悟はしていたでしょう。だからそれも含めて、もっと根本的な出来事が、陳恭にはあったんだよね。遡ること数年前に。確か初めて重要な情報を盗んだ時に。いやはやいやはや。
そういえば、五仙道の黄預も、ある意味、踏んだり蹴ったりな人でした。
聖女を妻にしーようっ♪なんて思ってたら、聖女は密偵で、しかも潜入してきた陳恭の妻だったとか。配下の長老や部下達を何人も死なせてしまい、長く続いてきた五仙道が、陳恭の暗躍のせいで、一夜にして壊滅させられちゃったとか。
だけど、それもこれも郭淮の計略、目を潰れと言われちゃうとか。郭淮に命じられて陳恭と手を組まざるを得なくなって、疑いつつも仕方なく任務遂行してたら、やっぱり陳恭に翟悦の形見の刀を向けられて、結局やられちゃうとか。
何度目かの、また私は間違えたのか…って表情がねえ。コワモテながら意外と純なところを持ってたっぽいこの人、ひとつも救いがなかったですね…
陳恭が、馮膺に向かってだったかな、珍しくきっぱりと、荀詡を殺してはいけないって言い切ったり、ずっと支援役をしてくれていた密偵仲間の林良(りんりょう)にも、自分を守りたければ、命がけで孝和を守ってくれって涙を零して言ったりするんだけど。
この「自分を守りたければ」というのは、決して陳恭が無事に生き延びていくために、ではなかったんだよね。コトが済んでも自分は手を引けないかもしれないからと、覚悟を決めていたうえ、その先のシナリオも自ら描いて、既に実行に移していたんですよ。
陳恭の「尊厳」を守りたければ、だったのかな。
もう、とことん疲れ果ててしまったのでしょね。郭淮、李厳、馮膺、楊儀、それぞれがそれぞれの思惑を含んで、みんな陳恭に命令してくるんだもん。各相手に対する反応も、コイツの前ではどういう立場だったっけ、どこからどこまで知ってる設定だっけ?とか、絶対にごちゃごちゃになるわ。
こんなにも必死で心身を投げ打って務めても、結局は国のためにという言葉に翻弄され、何かあれば真っ先に切り捨てられる駒。こういう時代では決して珍しくもなかったのでしょうが、やっぱり哀し過ぎる。
父親の敵はアイツだったのかと、それを目指して必死で動いてきたら、なんのことはないソイツもただ上からの命令を実行しただけだったという。思いの芯をへし折られてしまったような虚無感。
誰が正しいのか分からなくなった、話が繋がらなくなった、混乱して精根尽き果てた。
でもひとつだけ分かることがある、孝和は生きるべきだ。
林良へのこの呟きが、ずっしりと響きます。
揺るぎない芯はもうそこにしかなかったんだなあ。一筋の光明といったものではないかもしれないけど、多分陳恭にとっての最後の寄る辺。
そんな陳恭のことを、ずっと行動を共にしてきた林良だけが全て知っていました。だから林良も手を震わせて泣いてたね。
司聞曹の設立者、諸葛亮の腹心である楊儀が、いちいち漢復興のためって、お念仏のように言うのがうざったかったですねえ。
それさえ言っとけば、相手の異論も飲み込ませられる、なんでも思い通りに人を動かせるみたいな感じなの。そこには人の、味方の命のやり取りも含まれるの。
一応ね、目的は確かに主の諸葛亮のため、諸葛亮が動きやすくするため、ひいては漢王朝のためってことにはなるんだけどさー。
そんなイヤーな職場(笑)にあって、唯一の癒しが、荀詡の部下裴緒(はいしょ 字は子明 しめい)くんでした。めっちゃ荀詡を慕っていて、荀詡からの信頼も厚くて、胡散臭い同僚の甘言も嫌味も、笑顔で上手に躱せちゃう、とってもデキル子。荀詡は子明くん以外には、誰にも本当のことが言えないんだよね。
途中でさあ、射られた荀詡を引きずって、藪の中で葉っぱや枝を乗っけて急いで隠して、自分は国に殉ずるから荀の頭領をきちんと葬れないって、せめてもと必死で隠して、わーっと戦いの中に飛び出してくんですよ。うう、うそぉ、子明くん、死んじゃうのー?だった、ここ。
もしかしたら、ラストのアレの次に悲しかったかもしれん…
ラストね、うん、ラスト。
ぜひ、見て確かめてみてくださいな。
白宇(バイユー)目当てで見ましたが、「ロング・ナイト」ほどではないかもしれないけど、辛い役でした。ちょっとホッとしたいので、少し「紳士探偵L」の前半でも見ようかな(笑)飄々羅非(ルオフェイ)を見て、ちょっと気楽になりたくなっちゃった。
陳恭役の陳坤(チェンクン)がまた、とっても良かったです。
最初の頃、曹魏の主簿で郭剛と一緒に遊んでる辺りの、まー、色っぽいこと色っぽいこと。
若い頃の写真もあちこちに落ちてたけど、この方、今のほうがずっといいよね。
やっぱり「鳳凰の飛翔」とか「陰陽師・二つの世界」見ないとかな。どっちもNetflixだなあ。
ちなみに、陳坤は白宇よりも一回り以上年上です。陳坤が若いのか、白宇が老けてるのか(笑)
こりゃ、どっちもだな(^m^)
でも、これを見るために、エンタメアジアに入ったので「蘭陵王」くらいは見ておこうかなと思って、見始めたら、やだっ、顧廷燁(こていよう(違)、めっちゃ若い!となっております、今(笑)
この先どうなるか分からないけど、今のところこのヒロインは大丈夫、いけそう(^m^)
Netflixはその後、考えることに致しましょう。
あ、女性キャストには全然触れてませんが、アンジェラ・ベイビーさんを初めて見ました。
お人形さんみたいなお顔ね。
いずれにしても、各思惑を追うのが難しかったけど、面白かったぞ、「風起隴西」
諸手を挙げて、オススメーとは言えないかもしれないけど(なんでこういう状況?とか考えながら見ていこうとすると、ある程度の歴史の流れも基本知識としてあったほうがいいかもしれないし、それぞれの動向を把握しながら見進めるのは、なかなかにこんがらがるから)、白宇ファンは見ないと♪だと思いますし、陳坤の色気に転ぶかもしれません(笑)きっと、見て損はないドラマだと思います。
作品情報
- 制作 中国 2022年発表 全24話
- 原題 風起隴西
- 原作 馬伯庸「風起隴西」
- 監督 路陽
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