またタイトルで喋ってますが。
つい先日「閑話休題 今見ている、これから見ようと思っている中国ドラマ」の中で、さてどうしよう、Netflixには既にあるんだけどと口走っていた、朱一龍(チューイーロン)兄さんの映画です。
あ、邦題は「星明かりを見上げれば」
ええ、さくっとNetflixに入ってしまいました。とりあえず一か月だけでもと思い。
い、いいの、傅孟柏(フーモンボー)の「返校」も見たかったしっ。馬天宇(マーテンユー)の「幻城」もここにしかなかったんじゃなかったっけか。
ま、自分への言い訳はともかくとして。既に待機中が一杯あって、手を広げてる場合じゃないんだケド。
この映画の莫三妹(モーサンメイ)役で朱一龍は、第35回中国映画金鶏賞の主演男優賞を受賞しています。あの時はSNSにたくさん動画や写真が上がってきてました。金鶏賞って中国で一番権威のある映画賞なんですってね。武小文(ウーシャオウェン)役の杨恩又(ヤンエンヨウ)ちゃんも、主演女優賞にノミネートされてたんだとか。
公式がYoutubeに授賞式の動画を上げていますので、ご興味のある方はどうぞ。2時間過ぎから、主演男優賞です。感極まる朱一龍が見られます。翻訳はありませんが、かなり長めのスピーチではないだろうか。
所感 できるだけネタバレなしで
映画はですね、根は優しい不良に子供が絡んだら、そりゃ、泣かせるお話が出来上がるじゃんかー!そのものです。だからストーリー全体的には、よくあると言えばよくあるお話、ベタな展開ってやつかもしれません。でもそのベタな展開をおして余りあるものが、この映画にはありました。
そういえば先日も書いたんですが、あちらでは葬儀屋さんって、まあまあ忌避的な扱いをされたりする職業のようです。ただこれは、根強く残る古い感覚なのかもしれません。「R.I.P. 霊異街11号」でもその感じが、根底に流れていました。
刘江江(リウジアンジアン)監督のスピーチにその辺り話しているものがあって、ご自身も大工さんのおうちで育って、少なからず似たような境遇にあったので、葬儀屋さんは描いてみたかったと言われていたらしく(作品公式Weiboの翻訳文をちょっと見た限りですが)、え、大工さんもなの?と思ったんだけど。
でもこういうのは、日本にもあるよね。対象は違えど、多かれ少なかれ。
葬儀屋さんについては、私が育った環境では全くそういう感覚は植え付けられませんでしたし、家族親族の葬儀も何度か経験しているので、むしろとても大切で有難い、頭の下がる職業だと思っているんですが。人は必ず死を迎える生き物なんだもの。でも、死を不浄と思う感覚ってのはあるんでしょう。
なので多分、これも先日も書きましたが、あちらでは、アウトローがカタギの仕事をしようと思ったら葬儀屋さんというのは、ある意味テンプレ的なものなのかもしれません。どちらの作品も、家業を継ぐ話ではあるんだけど。
とまあ、お話としてはそうなんですが、だとしても、それを置いても、主役2人の演技に持って行かれました。泣いたよっ。こりゃー、受賞するよっ。
ええとこのボンだの、政府の偉いさんの若い頃だの、危機的状況でのヒーローだの、いわゆるシュッとしたカッコイイ役の多かったであろう朱一龍兄さんが、丸坊主にして、ご遺体に手を合わせる時もガムをくっちゃくっちゃして、荒っぽい仕草と台詞で、俺は前科者だからなって凄んだりするのよ。開始5分で指輪泥棒を疑われて、パンツ一丁になったりするのよ。子供担いで必死で走ったり、背中に小文乗せてお馬さんレースに挑んだり(圧勝(笑)、ピンクの扇子持って無の表情で踊ったりさせられてるのよ。
ただ、その演技の上手さに、すぐにそれがこの人、三妹の普通なんだと、すいっと思わされて慣れてしまった頃に、ふと「あの目」で小文を見たりするのを見せられるんですよ。「鎮魂」でも何度も見た「あの目」です。二重くっきり睫毛バシバシの切ないあの目。
朱一龍は、役作りのために葬儀屋さんに行って、かなり勉強したみたいですね。
私が無知だっただけかもしれませんが、死後硬直の和らげ方なんて、初めて知りました。
特殊なエンバーミングの技術も、葬儀屋さんが持ってることもあるんですねえ。日本では納棺師が一般的にしてくれる以上のこと、この映画に出て来た内容のようなことは、専門の資格を持った方の範疇ですよね。
お葬式のシーンでも、狭いマンションの階段を棺を担いで降りる時に、何か大声で言うしきたりの台詞みたいなのがあるんかーとかね。大変そうだったな、あれ。でも考えたら、マンションの狭いエレベーターに棺桶って入らないよね。どうしてるんだろう、日本でも。
「R.I.P. 霊異街11号」で見た台湾のお葬式の感じとも、中国本土のはまた違っていて、それも興味深かった。舞台は武漢なので、土地柄もあるのかもしれないけど。
そういえば、朱一龍の出身は武漢。台詞も武漢の方言だったみたいです。
全く分からなかったけどな。
小文が最初に持っていた槍みたいなのは、哪吒(なた)の武器なんですって。片や三妹は、孫悟空ってあだ名があったのかな、悟空の緊箍児(きんこじ)を模ったシルバーのブレスレットをしています。
ここら辺の説明は翻訳されてなかった気がするんだけど、物語「西遊記」では、悟空と哪吒が協力して戦うお話もあるみたいだよね。ただそれをしていたのは三妹が、家業に真剣に向き合うようになるまで。小文も一度折れて三妹に直して貰った武器を、その頃から持たなくなってますね。
それにしても小文が本当に良かった。
最初は、誰にも懐かない気の荒い野良猫みたいな顔で(しかもすぐ噛みつく)、それでも周囲をよく観察していて、だんだん三妹の本当の優しさや悩みを見抜いていくところや、すっかり懐いてしまって、パパができたってなるところや。
この感じの、口元をへの字に曲げた表情を事前にいくつか見ていたので、かなり個性的なビジュアルの子だなと思っていたんですけど、上記金鶏賞の授賞式の表情や、映画公式weiboのBTS動画を見ると、これが完全に演技で作っている顔だと分かります。
最初は概ねこれは三妹に向けられていたんだけど、伯父のところではなく、三妹達について行きたいと自分で意思表示してからは、三妹を守るためにこの顔をするんですよ。
そんなん、もー、めちゃくちゃ可愛いじゃないか~。
三妹に対しては、めっちゃとんがってるエキセントリックじいちゃん(三妹の父親)も、小文には「じいちゃんと呼んでくれ♪」になっちゃうのが可笑しかったですね。
あ、パパができたーっていうのは、三妹に向かってなんだけど、独身で養子縁組をするには子供より40才年上でなければ認められないらしく、小文は正確には、葬儀社の従業員、王建仁(ワンジェンレン)と銀白雪(インバイシュエ)夫妻の養子です。独身じゃダメなら結婚すりゃいいじゃん発想で、銀白雪のところにお願いに行ったら、風呂から王建仁が出て来ちゃったところは笑いましたよ。
そういう意味では、莫三妹って人はこの2時間弱の間に、かなり踏んだり蹴ったりの目に遭ってるよね(^m^)
この王建仁と銀白雪もとっても良かった。決して目立つことをする訳ではないのに、たださり気なくそこにいて、後継者の三妹にもズケズケとモノを言い、だけど2人ともとっても気持ちの優しい人達なんだろうと分かる。
王建仁もスリだったらしいし、楽器のできる銀白雪も「物売り」だったと翻訳されてましたが、これは何か別の意味があるんでしょうかね。そう言われて銀白雪は目を逸らしたから。
それにしても、葬儀社 上天堂のお隣が、ブライダルショップってのは可笑しかった。じいちゃんは長いこと営んでたんだろうと思うから、ブライダルショップのほうが後からだよね、多分ね。奥さんは攻撃的だけど、旦那は三妹と結構仲がいいのも面白い。
最後に王建仁と銀白雪がお隣で結婚式をして、上天堂になだれ込んで来て、来世も結ばれよう♪ってのは良かったですけどね。あんだけの人数、上天堂の店内に吸収できたんか?みたいな変なことが気になったよ(^m^)
以前、長い中国ドラマを見慣れてしまうと、映画があっという間に、なんだか物足りないうちに終わってしまうと書いたのですが、良い作品はそうじゃないんだなと、ちょっとシミジミしながら見てました。きっと無駄だとか冗長だとか、そういうのが一切なかったからなんじゃないだろうか。それでも充分物語に納得してついていける内容。とても良い映画だったと思います。
この↓の予告動画でも流れている杨恩又ちゃんと朱一龍兄さんの歌っているのはエンディング曲です。これも良い曲でしたねえ。このサムネの兄さんは、イケメンが隠せてないな(笑)
作品情報
- 人生大事 Lighting Up the Stars 2022年 中国
- 邦題 星明かりを見上げれば
- 監督・脚本 刘江江(リウジアンジアン)
- 第35回中国映画金鶏賞 主演男優賞 朱一龍(チューイーロン)
- 第35回中国映画金鶏賞 新人監督作品賞 刘江江(リウジアンジアン)
キャスト
- 莫三妹(モーサンメイ)…朱一龍(チューイーロン)
- 武小文(ウーシャオウェン)…杨恩又(ヤンエンヨウ)
- 王建仁(ワンジェンレン)…王戈(ワンゴー)
- 銀白雪(インバイシュエ)…刘陆(リウルー)
- 老莫(ラオモー)…罗京民(ルオジンミン)
- 熙熙(シーシー)…吴倩(ウーチェン)
- 海菲(ハイ・フェイ)…李春嫒(リーチュンアイ)
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