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「宮廷恋仕官~ただいま殿下と捜査中~」これはタイトル詐欺っ!←いい意味で。

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宮廷恋仕官
画像出典 微博 御賜小仵作 公式
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所感 ネタバレです

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きっとこんな意見も昨今、少なくないのではないかと思うんですが。
こういう作品に出会うと、日本の配給会社の方々って、みなさん、どういう感性の持ち主なんだろうと、ちょっと疑問を持っちゃう訳ですよ。

韓流や華流ドラマを好んで見てるような人は、どうせみんな恋愛脳だから、タイトルも夢見がちっぽく、キービジュアルも、ピンクピンクに花飛ばしておけば飛びつくに違いない。

そんなふうに思われている気がしてならない、ってのは言い過ぎでしょうか。
だって、百度や微博にある本国のキービジュと比べたら、一目瞭然なんだもの。
面白い作品を見つけて、持って来てくれるのは感謝してます。当たり前に。
でも、邦題と副題、キービジュに対する考え方を、そろそろ見直して頂けないかと思うのよ。
タイトルのシンデレラ連発も、説明文のツンデレ連呼も食傷気味。妙にツンツンしたヒーローが多いっちゃー多いんだけど、ツンデレって、ただのガキんちょってことも多いんでなー。

画像出典 微博 御賜小仵作 公式
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本国のテイストはこちら

ヒロインが、ワガママ自己中お花畑キャンキャン娘だったり、物語のエネルギーがラブコメに全振りだったりする場合は、現状のままで問題ないと思います。そういう区別は必要ですからね。それなら私も間違えずに選択ができます。

でも少なくとも、このドラマは違う。
恋愛要素はあります。メインカップル、サブカップルといる。
だけど、それだけじゃないんだよ、全然。
なのにあたしゃね、このタイトルとキービジュで敬遠してたんだよ、このドラマ。

原題は「御賜小仵作」
賜った駆け出し検視官、検視官ちゃん、みたいな感じでしょうか。グーグル先生は「陛下から贈られたささやかな贈り物」と訳しちゃってたけど。

ヒロイン楚楚(そそ)は、自分の検視の技術に自信を持っていて、しかもそれが自己評価だけのことじゃなく、実力も仕事に対する姿勢も、一流です。
とっても真面目で善良な地方の検視人一家で育ち、都では戦死とされていた蕭瑾瑜(しょうきんゆ)の父、実は生き残っていた簫恒(しょうこう)からも、知識や心構えをしっかりと授かって来てる。
そして、ハレの場を見学することさえも忌避される、検視人への偏見も熟知している。いじめられて友達もいなかったから、偏見がない社会になればいいなあと思ってはいても、検視人である以上、仕方のないことだと割り切っていて、検視以外の時は常に弁えて、一歩下がっている。
だけどそこに、卑屈さは感じません。実力に裏打ちされた仕事への誇りがあるからでしょう。

花嫁衣裳さえも今まで一度も見たことがないと言う楚楚は、子供の頃、検視人が行くと嫌がられることを知らずに村の婚礼を覗きに行って、家族がお金を包んで謝罪に行く羽目になった話をします。
聞いていた冷月(れいげつ)は痛ましそうな顔になるんだけど、楚楚はケロリとしている。女の子なのにそんな可哀そうなって思うようなところ、楚楚は、無知だったから家族に迷惑かけちゃったんですよねえ、くらいしか残っていないように見える。
それもこれも、自分は検視人の一族、自分が目指すのも一流の検視人ってのが揺るぎないのよ。だってぇ、女の子ですもぉん♪が先に立たないのよ。
見た目はほわんとした子だけど、芯はしっかりしていて、田舎育ちの逞しい雑草魂も持っているので、多少のスットボケ感はあるものの(笑)楚楚は、かなり好感の持てるヒロインです。

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そんな彼女は、検視官登用試験のために都に行き、検視人である自分へもフラットな態度で優しく接してくれ、仕事にも敬意を払ってくれる安郡王、蕭瑾瑜に出会い、部下として、真っ直ぐな信頼を寄せていきます。

蕭瑾瑜の方は、楚楚の卓越した才能も素朴な善良さも早々に認めつつ、司法を司る三方司(刑部、御史台、大理寺)の長という立場上、彼女が本当に裏のない人物なのかと、それが完全に明らかになるまではと、とことん疑ってかかる。検視官としての腕前は間違いなく合格レベルだけど、蕭瑾瑜は、冷静に事実や証拠を集めて考慮し、しっかりとした裏付けが取れないと決定を下さない人。とある疑惑解明の目論見もあって、合格を正式に告げないまま、これも試験だと言い含め、検視人として楚楚を使いまくる。でも感情的には、結構分かり易ーく絆されてく(笑)

遺体の状態から、楚楚が殺害方法をシミュレーションして実際にやってみる時の相手は毎度安郡王で、思いのほか近付いちゃったりするから、彼は意識しちゃうんだけどね。楚楚はとにかく、遺体からの声を正確に理解したい気持ちしかないので、非常にビジネスライク。序盤は特に。
ハタから見てると、結構な態勢だったりしたけど(笑)でも、ま、そういう日々の積み重ねでしたね。

だから楚楚と蕭瑾瑜の恋は、まずそれぞれの能力を認め合って、信頼関係と共に出来上がっていったもの。四六時中一緒にいるから、くっつくべくしてではあるし、2人ともちょっとめんどくさいとこもあって(笑)ジレジレもしてたけどさ。
楚楚は何より、検視官になりたい一心だから、全く恋愛脳ではない。むしろカタブツで扱いにくいとされている蕭瑾瑜のほうが、楚楚大事、楚楚がいないとダメだから…となるのが早いんじゃない?

検視官登用試験のために長安に入って間もなく、街中で男の怪我詐欺を見抜いたことで、楚々は大理寺少卿、景翊(けいよく)の目に留まります。身分関係なく受験できると聞いてやって来たと言う楚々に、景翊は大理寺の令牌を試験の役に立つと渡してくれました。
景翊の推薦のお陰で楚々は、安郡王が陰から観察している実際の検視試験を受けられることになったんですな。どうやら、身分に関係はないらしいけど、女子だと推薦がないとダメっぽかったね。
だから景翊の目利きがすごかった。自画自賛だけで誰も褒めてくれなかった気がするけど(笑)時代を考えれば、あ、コレは本物だと感じてすぐ、身分も性別も関係なくチャンスを与えようと思ってくれるって、それだけでとても人として好ましい。

宮廷恋仕官
画像出典 微博 御賜小仵作 公式
仲良し

この景家は、嘘を見破れる一族らしいんだよね。状況を読むとか、なんとなくおかしいっていう違和感に敏感ってところかな。それにしちゃ、景致パパ、黒幕にはまんまとやられたよね。対宦官ではいろいろ陰で暗躍はしてたけども。
景翊はチャラい感じで通していて、軽功が得意。普段蕭瑾瑜について密偵みたいなこともしていて、屋敷の出入りも窓を蹴破るのが常。
お陰で蕭瑾瑜は、楚楚と初対面の時、窓際で書物を広げてたところ、飛び込んで来た景翊のせいで扉に当たってデコを赤く腫らし、手を踏まれてケガしてたりする(笑)
それで楚楚は、蕭瑾瑜を試験の遺体役だと誤解して、服を脱がせようとしちゃうっていうね。

重臣、景致(けいち)の息子景翊と、西平(せいへい)公主の息子、蕭瑾瑜と双子の蕭瑾璃(しょうきんり)、黔(けん)中道節度使、冷沛山(れいはいざん)の孫娘、冷月、この4人は幼馴染。
4人のバランスも良い感じでした。
弟一番♪の朴念仁蕭瑾璃と江湖を彷徨う女侠姐さん冷月は武闘派、蕭瑾瑜はカタブツの頭脳派、景翊は考え方も柔軟な隠密派。で、4人とも善人。

特に景翊は、景致が楚楚を、兄弟分簫恒の敵の娘と誤解して暗殺しようと動いた時に、自分も兄弟分蕭瑾瑜のためにと、簫兄弟と冷月と共に毅然としてそれを阻止しました。景致の命と蕭瑾瑜の命と双方抱えて動いてたから、時々怪しげには見えたけど、目立たないところで、この人の働きはかなりのものだったと思うんだよねえ。ちょいちょい、安郡王と楚楚の恋のアシストもしてましたわよ。悉く裏目に出たりもしてたけど、あれは蕭瑾瑜の恋愛下手のせいも半分。

宮廷恋仕官
画像出典 微博 御賜小仵作 公式
仲良し

景翊は昔からずーっと一途に冷月が好きだったんだけど、勢力関係の問題で、景致は息子と冷月がくっついてはならんと考え、まず蕭瑾瑜、次に蕭瑾璃と冷月の縁談を纏めようとしますが、3人にその気は皆無。よくある計略結婚話だし、そういう時代あるあるなんでしょうが、なんでまあ、こうも親世代が余計なことを画策するんだかね。
西平公主が、のらーりくらーりと躱しまくってくれてましたが。
ただのチャラ男じゃないことを、冷月にも分かって貰えてよかったわね(^m^)

蕭瑾璃の弟命、朴念仁っぷりも可笑しかった。普通、大人の弟、お姫様だっこで運ばないって(大笑)
だけど彼の、細かい説明めんどくさっ俺には無理、までも省略した「一言では言えん」連発は、らしくって好きでしたわ(^m^)

宮廷恋仕官
画像出典 微博 御賜小仵作 公式
仲良し

この西平公主と蕭瑾璃、蕭瑾瑜兄弟にも秘密があります。兄弟は知らず、ママだけがずっと隠してきた秘密。それにしても西平公主、どこまでも真っ直ぐで肝の据わったお方です。普通さ、こういう事情だったら、蕭瑾璃を外に出して蕭瑾瑜に家督を継がせるって、なかなかできないことだと思うのよ。間違いなくそれが適材適所だとは言えね。

途中までは、三代の皇帝に仕えた宦官、秦欒(しんらん)が分かり易い敵として幅を利かせてます。
先代までは宦官勢力が絶大で朝廷を牛耳っていたために、蕭瑾瑜の父、簫恒は、表向きは戦死とされていたけど、真相は秦欒に陥れられていたのでした。その時は辛うじて生き延び、現地の巫医(ふい)に助けられていたんだけど、ご丁寧にその後、刺客まで送られてもいて。

皇帝は、そろそろそ宦官の力も下火になりつつあるところで、なんとか厄介払いをしたいと考えてはいる。ただし、それは表に出せないままに、長安のジオラマを作りながら、ただじっと機を待ち続けています。なかなか本音の分からない皇帝だったな。
でも後半、秦欒の下で妙に様子を窺うそぶりを見せながら仕えていた金宝が、皇帝からの密偵だったことが分かるんだよね。

秦欒が、家では一生懸命に付け髭を付けてたのが、滑稽でもあり哀れでもありました。
宦官になるとヒゲは生えないみたいだもんね。声も高くなったり、おばちゃん体型になったりするらしいもんね。
どんな経緯で宦官になったのは分からないけど、昔の中国では、ヒゲは男の証とか権威を示すものでもあったらしいので、そこにかなり執着してたんでしょうなー。下っ端の宦官は全然気にしてない風だったのが、猶更その偏執の異様さを浮き彫りにしてました。

だけど物語全体の黒幕は別にいるんですよ。秦欒みたいに分かり易い人物じゃなく。
秦欒が過去に起こした事件を発端として、黒幕が準備してひとつひとつ起こしていく事件に、更に秦欒が表層を引っ掻き回して事態を複雑にしているのを、蕭瑾瑜たちが力を合わせて解明していきます。

蕭瑾瑜は楚楚と出会い、父の作った西平公主とお揃いの石飾りを彼女が持っていたことから、父、簫恒が生きているかもしれないとの希望を持ち、楚楚を連れて、彼女の故郷、黔州(けんしゅう)へと向かいます。楚楚自身にも、本人の知らない出自の秘密と疑惑があるらしいことが判明してね。
楚楚は、それとは知らず、故郷に隠れ住んでいた簫恒の教えを受け、石飾りを貰い、誰にも自分のことは話すなと固く言い含められていたので、なかなか本当のことを話さない。真面目過ぎる(笑)そして当然のことながら、自分の出自のことも全く知りません。
蕭瑾瑜も、楚楚の人柄は信じていても、立場への疑念を捨てきれないため、事情をはっきりとは告げない。お陰で、無駄に時間が(笑)

それにしてもパパ簫恒の謎かけは、めんどくさ過ぎた。
簡単に分かってしまうようでは、いつ秦欒の勢力にバレてしまうか分からないとはいえ。

こうして羅列してみると、36話の中に、随分とたくさんの謎がギュギュっと詰まっていたなと思います。
簫恒陥れ事件、生存確認、楚楚と蕭瑾瑜の出自の謎、都での官吏連続殺人事件、黔州の偽造硬貨問題、黔中道節度使軍の謀反疑惑、先帝の息子昌王生存疑惑に皇位簒奪騒ぎ…

そもそもの発端は、前皇帝が宦官の排除を狙い、監察御史の簫恒と剣南節度使の陳瓔(ちんえい)を繋いだこと。それを察した秦欒が、陳瓔の謀反をでっち上げ、簫恒も亡き者にしようとした。

西平公主は、当時同時期に都で妊婦だった陳瓔の妻と懇意にしており、事件の後、彼女の産んだ子を自分の子として育てた。
冤罪だとは言え、誤解されていた都で、その子を自分の子として育てるのは、相当な決意がいったと思うのに。そういう人なんですね、西平公主って人は。兄弟が真っ直ぐに育つはずです。

で、楚楚の本当の父は、陳瓔の副将。母は許依香(きょいこう)。いろいろとやらかしていた許如帰(きょじょき)の妹だったけど、亡くなった彼女を検視したのは、楚家の父、楚平。その流れで、棺内児だった楚楚を引き取り、育てていた。
というかさ、楚楚が許依香を検視したら、自殺ではなく他殺だとすぐに気付いただろうに、楚平パパは分からなかったんでしょか。公に出来ないから黙ってたって風じゃなかったよね。これほど時間が経ってから墓を暴いて楚楚が遺体を検視して、他殺だと確認してるって。ふふっ、ま、仕方ないか、子は親を越えるってことで。
そういえば、兄の楚河も、楚楚の検視の腕に驚いてましたもんね。え、コイツいつの間に?みたいに。となると、検視人楚家の教えのみならず、簫恒の教えが本当に楚楚の血肉になってたってことでしょう。

楚河のジタバタはただの困ったちゃんだったな。ハナから勝ち目なんて皆無だったので、いい加減やめときゃいいのに…と思って見てたけど。

ま、だから蕭瑾瑜と楚楚は、こんな事件に巻き込まれなかったとしても、ご縁のある2人だったってことではありますな。

それにしても蕭瑾瑜。あれだけ注意深くて、確実な証拠がないと信用しない人だったっていうのに、黒幕だけは、全く何一つ疑ってなかったですねえ。終盤の終盤になってようやく、よ?
途中、そろそろどうなの?と思った辺りはあったんだけど、全然だったのに、むしろびっくりした。一度も疑わなかった人物がひとりだけいるって状況を最後に持って来たかったんだろなとは思うものの、だとすれば、視聴者に、黒幕はコイツ♪提示が、ちょっと早過ぎた感はなきにしもあらず。

簫恒が見つかった周辺の状況も、え、そんなことができるのか?とか、何年も経ったのにこんな状態で見つかるの?とか、布、濡れてない!等々ありましたが、全体を通してみれば、そこはそれ、まあまあまあ、と思えるものだったかな。遺体を前にざっと跪く兄弟の絵ズラが美しくて、その辺りは帳消しになりました。

楚楚の検視のあれこれも、ほーっと面白かったり、それだけで断言できちゃうかなあ?と思ったりもしたけど、イラストアニメで説明してくれるのは、とっても分かり易かったよね。

とりとめなく書き連ねてきましたが。
このドラマは、タイトルで敬遠しては勿体ないドラマだったことは間違いないです。
有名どころは、余り出てないし(私が見たことのある俳優さんは刑部尚書の韓績@有翡の周以棠(しゅういとう)パパくらい)、煌びやかなセットも必要ない、多分余りお金のかかってないだろうドラマでしたけど、間違いなく、秀作だと思います。
迷ってる方は、ぜひ。

あ、最後に蛇足をひとつ。
中国ドラマあるあるの水中キス(現実の世界では人工呼吸でしたが)が、私にはちーっとも素敵だとは思えないのですが、みんな好きなの?(^m^)

作品情報

  • 制作 2021年発表 全36話
  • 原題 「御賜小仵作」
  • 原作 「仵作娘子」清闲丫头
  • 監督 楼健
  • 脚本 清闲丫头、銭小白

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