所感
面白いという評判を見たので、視聴開始となったのですが。
いやはや。なんって大変な24時間。いろいろあり過ぎて、48回ものだよ、24時間を。
中国版「24 TWENTY FOUR」みたいな呼び声のあるドラマのようですが、「24」を見ていない私には比較ができず。「ダイ・ハード」は見ているので、そちらにも近いのではないかなと。あの次々に巻き込まれてく感じね。
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そもそも主人公は、不良帥という警察業務にあたる不良人の元首領で、都尉という官職を持っていました。でも元上司の譚同寿と熊火幇34人を殺害し、死刑囚となっていたところ、この問題をなんとかしてくれやと、皇太子が任されている靖安司という新設部門から引っぱり出されてます。ここの徐賓(じょひん)という人の発明した大案牘術というデータ解析術で、最適な人物として弾き出され、靖安司司丞の李必(りひつ)という人に引き合わされて。
死刑囚なので拒絶する選択肢もなく、引き受けたら、んまー、次々次々、いろんなことが起きる起きる。
その度、命を賭けて戦い、長安を民を守り抜こうと奔走する(もう、奔走なんて言葉じゃ足りないのですが)主人公、張小敬(ちょうしょうけい)の不屈っぷりよ。
折れない、曲げない、諦めない。目的を見失わない。
んでまた、びっくりするくらい強い。
元々の気質だけでなく、その精神が培われたのは、張小敬の過去にあったんですね。
張小敬が兵になって10年後、所属していた安西大都護府第三十三折衝府の第八団、211人は、烽燧堡の戦いで突騎施と戦います。難攻不落と言われる塞に籠城しているものの、かなりの劣勢。兵糧も底をつき、生き残った味方も数えるほど。辛抱強く援軍を待ちつつ戦っていたものの、10数人の味方に対して、敵は3000。頼みの綱の援軍は、ついに現れませんでした。
結局、そこで生き残ったのは、隊長の聞無忌(ぶんむき)、張小敬、仲の良かった旗手の簫規(しょうき)含め、たったの9人だけ。
いやこれで、どうやって9人が生き残ったのかってのが、むしろ不思議だけども。
だからこそ、第八団の仲間達の心の絆は、計り知れないほど強いものがありました。
張小敬が、元上司の譚同寿と熊火幇34人を殺害して死刑囚となっていたのも、第八団の元隊長、聞無忌を熊火幇に殺されてしまったからだったんですね。
だけどあの時、烽燧堡に援軍が来なかったのは、当時の河西隴右節度使、蓋嘉運が、兵部尚書だった林九郎(現、右相)の命令で援軍を送らなかったためでした。
しかも、蓋嘉運は実は6000の兵を従えて、烽燧堡の近くに潜んでいたのです。第八団を捨て駒として敵の襲撃を待ち、第八団が全滅した頃に現れて、敵を一網打尽にする計画。要するに自分の手柄のため。
この事実を張小敬が知るのは、物語も後半になるんだけどね。
負傷した若い兵、劉宗器を、聞無忌は兵2人に護衛させて、塞から先に逃がすのですが、彼が生き残っていて、官吏として出世していたんですよ。で、再会した時に、それを知らされます。
いろんな出来事の後ろにいる右相、林九郎。皇帝の覚えがメデタイのをいいことに、冷遇されている皇太子を陥れて廃嫡を試みるのみならず、殺害まで画策するんだよ。ないことないことでっち上げて。
だけど皇帝は、若い頃は賢帝として名高かったものの、歳を重ねてもう目が曇っていて、皇太子にクーデターを起こされることばかり懸念しているので、全く右相を疑わないんですよね。有能な人物を優遇して何が悪いという。黒い野心にいい加減気付きやがれと、イライラさせられます。これ、玄宗がモデルらしいですが。
クーデターってのは何も、血縁から起こされるばかりじゃないでしょうに。右相は、自分と折り合いの悪い皇太子より、ちょいと甘いこと言えば簡単に篭絡できる永王を立てるつもりなんだしさ。まあ、右相はクーデターなんか起こすより、老い先短い皇帝はそのままに、その後を盤石にするつもりで動いてましたけどね。
それでも、皇帝を単純な愚帝として描いていないのは、良かったな。
右相、いろいろ腹立つヤツだったヨ(^m^)
あとは、姑息な愛を、いつの間にかちゃんと育んでた2人も、なんだかなあ…でしたけど。アイツら嫌いだわ。
そういえば、張小敬が必死で守ろうとしていた聞無忌の娘、聞染(ぶんせん)も、いまひとつ真意が分かり難かったよなー。
いろんな名前の軍隊が出て来て、えっと、その軍はどこのだっけ?というのが一番分かりずらかったかもしれません。誰派なの?ってところ。みんな甲冑にヒゲで、顔は分かり難いし。
前半は、ええとこのボンで皇太子の幼馴染の、靖安司司丞、李必がしゃきっと頑張るんですが、すんごく線の細っこいボンで、張小敬にも、子ギツネと呼ばれてるのがぴったりだったんですよ。
そんな彼も中盤から、どんどんボロボロになっていきます。張小敬は見るからに逞しそうだから、多少ボロッとしていてもアレだど、りひっちゃんはねえ。←
んもー、途中からずっと、り、りひっちゃーん!と呼んでたよ(笑)応援の意味で。
李必役の易烊千璽(イーヤンチェンシー)は、撮影当時17歳くらいだったんですね。2000年生まれなんですってっ!名前の易・烊千璽というのも、歓迎ミレニアム♪みたいな意味らしい。
いやあ、すんごい頑張ったなあ、おっさん達の間に混じって。17歳と言っても、幼少期から活動を始めているので、芸歴はかなり長いみたいですが。
彼はその後、中央戯劇学院に入学しています。この撮影よりも後。
そう、おっさん達と言いましたが、張小敬役の雷佳音(レイジャーイン)も簫規役の周一囲(ジョウイーウェイ)も、若いのよ。雷佳音は1983年生まれ、周一囲は1982年生まれ。ドラマの撮影時は30代。
なのにっ、なんっかすんごいおっさん感があったのはなんだろうー(大笑)
ボロボロだったからかなあ、特に張小敬は。
中国ドラマを見ていると、時々日本が、東瀛(とうえい)という名前で出てきますが、こちらは唐の時代で、日本は扶桑(ふそう)と呼ばれていたようです。遣唐使も行き来してた時代ですからね、阿倍仲麻呂なんて名前も、劇中セリフで出て来たので、遣唐使として渡り、そのまま残った人もいたでしょう。そんな刀鍛冶が登場したのですが、この方、慶余年のおっかない洪公公だったよー(^m^)
あ、日本と言えば、姚汝能(ようじょのう)役の芦芳生(ルーフアンシェン)は、中学から大学まで、日本にいらしたそうで、千葉大学を出てらっしゃるのですって。千葉大って割と近いんですケド、あっこに通ってたのかいっていうね(笑)
日本語が堪能なので、日本人役も多いそう。11年もいたら、普通にネイティブだよねえ。
白い長い羽根を2本つけて走り回っていた伝令役の陸三も、岡村秀さんという日本人の役者さんだったようですね。めっちゃ走ってたわー。見せ場もあったよ。
ともあれ、どーなっちゃうの、これ…って毎回思いながら見ていました。
撮影も大変だったでしょうねえ、死ぬかと思ったくらいって、どこかで雷佳音さんが言ってたらしいですけど。
セットもすごかったしね。
当時の長安は、こんなにいろんな人種が入り乱れてた国際都市だったんだねえ、なんてしみじみ見てしまいましたわ。こんな光景を、時代は少し後だけども、空海も最澄も橘逸勢も見てきたんだね。
原作は、馬伯庸(マーボーヨン)。この方は「三国志 Secret of Three Kingdoms」の原作者でもあり、これから見ようと思っている「風起洛陽」「風起隴西」双方の原作者でもあります。三国機密だけは毛色の違うドラマって気がするけど、このドラマを見て、「風起洛陽」「風起隴西」の期待は高まりました。
そういえば私は途中から、張小敬の口の形が気になって気になってね(笑)
ちっちゃいのよ。で、はーはーしてるシーンが多いから、ちょっとだけぽかっと開いてる時が多いんだけど、それが独特の形なのよー。
是非、見て頂きたい。そこ?(笑)
あ、追記。
全編通して印象に残ったのは、檀棋(だんき)、旅賁軍旅帥の崔器(さいき)と先の東宮右衛率、姚汝能。
りひっちゃんとこの下女(といっても超有能)の檀棋は別として、崔器と姚汝能は、一応味方側ながら、なかなか微妙な人達なんだけど、それぞれの迷いとか揺れとかが、ものすごく「人間」でした。
誰もいなくなっちゃった靖安司の門前で、ひとりぽつねんと仁王立ちしてた崔器の姿は、なんだか妙に哀愁を誘ったし、姚汝能は、ああ、キミはそこでそう出るか、そうかそうか…だったし。
他に、イスも程参もねーって、登場人物もいろいろ魅力的だったってことだなー。
オススメです。
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作品情報
- 制作 中国 2019年発表 全48話
- 原題 長安十二時辰
- 原作 馬伯庸「長安十二時辰」
- 監督 曹盾
- 脚本 爪子工作室
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